タイヤの空気は、乗っていなくても少しずつ抜けていきます。
しかも空気圧が下がっていても、見た目ではほとんど分からないことがあります。
バイクの点検は、こうした「見て分かるもの」と「道具で測らないと分からないもの」、そして「店に任せるもの」の3つに分けて考えると、何をいつ見ればよいかがはっきりします。
この3つに分けて考える
見て分かるもの: タイヤの傷や異物、ライトの点灯、オイルの漏れ跡
道具で測るもの: タイヤの空気圧(月に1回はエアゲージで)、チェーンのたるみ
店に任せるもの: ブレーキの分解・足回り・エンジン内部・電装の配線

自分で見る範囲と、店に任せる範囲
点検とメンテナンスの境目は、「見る・測る・補う・掃除する」までが自分、「外す・分解する・調整する」からは店と考えると分かりやすくなります。
| 場所 | 自分でやってよい範囲 | 店に任せる範囲 |
|---|---|---|
| ブレーキ | レバーとペダルの手ごたえ、効き、ブレーキ液の量を窓から見る | パッドの交換、ブレーキ液の交換・補充、分解 |
| タイヤ | 空気圧の点検と空気入れ、溝・ひび・異物を見る | タイヤの交換、パンクの修理 |
| エンジン・オイル | オイルの量を見る、漏れ跡を探す | エンジン内部の作業、異音の原因探し。オイル交換は自信がなければ店へ |
| チェーン | 汚れ落としと注油、たるみを見る | たるみの調整(車軸のナットを締め直す作業)、チェーン・スプロケットの交換 |
| 電装 | ライト・ウインカー・ホーンの確認、バッテリーの充電 | 配線の加工、電装品の後付け |
| 足回り | 洗車のついでに漏れやがたつきに気づく | サスペンション・ハンドルまわりの点検と調整 |
ブレーキと足回りは、作業の仕上がりがそのまま止まる・曲がる力に直結するので、慣れていても分解や調整は店に任せるのが無難です。
締め付けの強さ(トルク)や液の種類、オイルの量といった数値は車種ごとに違うため、自分で作業するときも必ず取扱説明書の値に従います。
「いつもと違う」と感じたら、乗らない
ブレーキの効きが甘い、レバーやペダルの手ごたえがいつもと違う。
走っていると聞いたことのない音がする、ハンドルがぶれる。
地面にオイルや液のしみがある、警告灯が消えない。
こうした違和感があれば走るのをやめ、販売店やバイク店で点検を受けてください。
走行中に気づいたときは、安全な場所に止めてから店やロードサービスに相談します。
乗る前に見る5か所
乗る前の点検は、バイクの周りを一周しながら、前から順に見ていくと見落としが減ります。
つぶれ方が前回と違わないか、くぎや石が刺さっていないか、側面にひびや傷がないかを見ます。
レバーとペダルを操作して、手ごたえがいつもどおりか、ブレーキ液の窓で液面が下限より上にあるかを見ます。
キーをオンにして、ヘッドライト・テールランプ・ブレーキランプ・左右のウインカー・ホーンを順に確かめます。
点検窓やゲージでオイルの量を見て、停めていた地面にしみができていないかも確かめます。
チェーンがだらんと垂れていないか、表面が乾いて赤さびが出ていないかを見ます。
チェーンではなくベルトやシャフトで後輪を回す車体は、STEP5の代わりに後輪まわりに異音や引っかかりがないかを気にかけておけば十分です。
オイルの量の確かめ方は、エンジンを少し回してから止めるか、冷えたまま見るかが車種で違うので、取扱説明書の手順どおりに見ます。
サイドスタンドで傾いたまま見ると量が正しく出ないため、平らな場所で車体をまっすぐ立てた状態で確かめます。

一人でブレーキランプを確かめるには
ブレーキランプは自分の位置から見えないので、夕方や車庫の中なら、後ろの壁に光が映るかで確かめられます。
明るい屋外なら、ランプのすぐ後ろに手のひらをかざし、レバーを握ったときに手が赤く照らされるかを見ます。
前ブレーキのレバーと後ろブレーキのペダル(スクーターは左レバー)の両方で点くかを、別々に確かめておきます。
走り出してすぐの数十メートルも点検のうち
ブレーキの効きは止まった状態では分からないので、走り出してすぐ、周りに車のいない場所で前後のブレーキを軽くかけてみます。
エンジンのかかり方、ゆっくり走るときと加速するときの調子、変な音がしないかも、この最初の区間で気にかけておきます。
いつ何を見るか、頻度別のチェック表
毎回すべてを細かく見る必要はなく、乗る前は目で見る確認、道具を使う点検は月に1回や給油のたびにまとめると続けやすくなります。
| タイミング | 見る箇所 | 見方のポイント |
|---|---|---|
| 乗る前 | タイヤの見た目、ブレーキの手ごたえ、灯火とホーン、漏れ跡、チェーン | 上の5か所を一周しながら。走り出してすぐブレーキの効き |
| 給油のたび | オイルの量、ブレーキ液の窓、チェーンのたるみと汚れ | 平らな場所でまっすぐ立てて見る |
| 月に1回以上 | タイヤの空気圧、溝の深さ | 走る前の冷えたタイヤをエアゲージで測り、指定空気圧に合わせる |
| 雨の日や洗車のあと | チェーン | 乾かしてから注油し、余分な油を拭き取る |
| しばらく乗らないとき | バッテリー | エンジンのかかりが弱くなったら充電や交換を考える |
| 取扱説明書の距離・期間ごと | エンジンオイル、オイルフィルター、冷却水など | 交換の時期と量は車種の値に従う |
| 1年に1回ほど | ブレーキ・足回り・ハンドルまわり | 店で定期点検を受ける |
指定の空気圧は、車体に貼られたラベルか取扱説明書に、前輪と後輪で別々に書かれています。
走ったあとはタイヤが温まって空気圧が高めに出るので、走ってきた直後に測って空気を抜くと、冷えたときに足りなくなります。
タイヤの溝は、溝の中にある盛り上がり(スリップサイン)が表面と同じ高さになったら交換の時期で、二輪の溝の深さの基準は0.8mm以上です。

「毎回乗る前に」は義務ではないが、時期は自分で決める
126cc以上のバイクの日常点検は、法律上、走った距離や乗ったときの調子から判断して、使う人が適切な時期に行うことになっています。
決まった間隔がないぶん、「乗る前は目で見る、月に1回は測る」と自分のルールを決めておくと、点検が抜けにくくなります。
同じく126cc以上のバイクには1年ごと・2年ごとの定期点検も決められていて、中身はブレーキや足回りを外して見る作業が多いため、店に頼む前提で考えておきます。
125cc以下のバイクでも、乗る前に見る中身は同じです。
最初にそろえる道具の優先順位
道具は、上の頻度表で「自分で」やる作業に使うものから順にそろえれば足ります。
| 順番 | 道具 | 使う場面 | 選ぶときに見る点 |
|---|---|---|---|
| 1 | エアゲージ | 月1回の空気圧の点検 | バイクのバルブに当てやすい口の形か。目盛りが読みやすいか |
| 2 | ウエス(布)と小さなライト | 漏れ跡やチェーンの汚れを見る、拭く | ライトは両手が空くヘッドライト型が使いやすい |
| 3 | チェーンの掃除用品と注油用の油 | 雨や洗車のあとの手入れ | チェーンの種類(シール付きか)に合うもの |
| 4 | 空気入れ | 空気圧が足りないとき | バイクのバルブに合う口金か。ゲージ付きなら測りながら入れられる |
| 5 | 工具セット | ねじのゆるみの確認、小物の取り付け | メガネレンチ・六角レンチ・ドライバーが入ったもの |
| 6 | メンテナンススタンド | センタースタンドのない車体で後輪を浮かせる | 車体に合う形か。チェーンの手入れを自分でするなら |
エアゲージは、点検の中でいちばん「見ただけでは分からない」空気圧を数字で確かめられるので、最初の1つにするならこれです。
工具を買う前に、車載工具を確かめる
車種によっては、シートの下などに簡単な車載工具が入っています。
まず中身を出してみて、足りないものだけを工具セットで補うと、同じサイズを二重に買わずに済みます。
締め付けの強さが決められているねじ(オイルを抜く穴のボルトや車軸のナットなど)を自分で締めるなら、トルクレンチで取扱説明書の値に合わせる必要があり、それがそろうまでは店に頼むほうが安全です。

最初は買わなくてよいもの
ブレーキの分解やピストンを押し戻すための専用工具
ホイールやサスペンションを外すための大きな工具
使い道が決まっていない、点数の多い大型の工具セット
店に任せる範囲の作業のための道具は、持っていても使う場面がありません。
点検で迷いやすいこと
- 通勤で毎日乗るのに、毎朝5か所も見ていられますか?
-
毎朝の点検は、タイヤを見る・ブレーキを握る・ライトを点けるの3つだけでもかまいません。
オイルやチェーンは給油のたびに、空気圧は月に1回と、残りを別のタイミングに回すと続けやすくなります。
- 中古で買ったばかりのバイクは、どこから見ればよいですか?
-
前のオーナーがいつ何を交換したかが分からないなら、一度店でオイル・タイヤ・ブレーキ・バッテリーの状態を見てもらうと、その後の交換時期の起点がはっきりします。
- ブレーキ液が下限に近いとき、自分で足してもいいですか?
-
ブレーキ液の減りはパッドのすり減りや漏れのサインのこともあるので、足して終わりにせず店で原因を見てもらいます。
液の種類を間違えたり、ふたを開けて水分やごみが入ったりすると、ブレーキの効きに関わります。
作業ごとの手順は、オイル交換、チェーンの掃除と注油、バッテリー、タイヤの空気圧、洗車のそれぞれの記事で詳しく取り上げています。
点検でいちばん大事なのは、ふだんの手ごたえや音を知っておくことです。
いつもの状態を知っていれば、「何かおかしい」と感じた日に乗らないという判断ができます。
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