バイク用プロテクターの性能試験では、決まった重さのおもりを落として、硬い台の上でプロテクターの下に伝わる力を測ります。
つまりプロテクターは、ぶつかったときの衝撃を「やわらげる」もので、けがを防ぎきるものではありません。
そのうえで、今の服で守られていない場所を見つけ、そこから順に足していくのが、むだのない揃え方です。
部位ごとに、守れる範囲と限界がある
プロテクターは、着ける場所によって形も役割も違います。
| 部位 | よくある入り方 | 守れる範囲 | 限界・気を付けること |
|---|---|---|---|
| 背中 | ジャケットのポケットに差し込む/単体で着るベスト | 背骨のまわりにぶつかる衝撃をやわらげる | 形によって覆う範囲が違う。首は覆わない |
| 胸 | ジャケットの前のポケット/単体 | 胸の前側にぶつかる衝撃をやわらげる | 覆うのは胸の前側だけで、首やわき腹は覆わない |
| 肩・ひじ | バイク用ジャケットに最初から入っていることが多い | 転んで路面に打ち付けやすい関節を覆う | サイズが大きいと、関節の位置からずれる |
| ひざ・すね | バイク用パンツに入っている/上から巻く | 路面や車体に当たるひざの前側を覆う | 普段のジーンズには入っていない |
| 腰(お尻の横) | バイク用パンツのポケット | 横に倒れたときに当たる腰の骨のあたりを覆う | ポケットがないパンツも多い |
表の「守れる範囲」は、プロテクターがその場所にきちんと乗っているときの話です。
サイズが合わずにずれていると、硬い部分が関節や背骨から外れ、着けていても肝心のところが覆われていないことになります。
プロテクターでできないこと
試験は決まった重さと速さの衝撃で行うもので、実際の事故で体にかかる力と同じではありません。
速度が高い衝突や、体が強くねじられる転び方では、プロテクターを着けていても大きなけがを負うことがあります。
覆っていない場所(首、わき腹、太ももなど)は守れません。
プロテクターを着けたからといって、速度や車間の取り方を変えないことが前提です。

どこから揃えるか
足していく順番の目安
1. 今のジャケットとパンツに、どこのプロテクターが入っているかを確かめる
2. 入っていなければ、まず背中
3. 次に胸
4. 普段のズボンで乗っているなら、ひざ
5. 肩・ひじが入っていないジャケットなら、ジャケットごと見直す
まず、今の服に何が入っているかを確かめる
手持ちのジャケットの背中の内側と、胸の内側を開けてみてください。
ファスナーや面ファスナーの付いたポケットがあって中が空なら、そこに差し込む専用のプロテクターを足せます。
中に入っているのがプロテクターか、形を整えるだけのパッドかの見分け方は、ジャケットの選び方の記事で扱っています。
最初に足すなら背中
肩とひじは最初から入っているジャケットが多い一方、背中は何も入っていないことがよくあります。
そのため、今の装備にいちばん大きく足りていない場所になりやすいのが背中です。
背中用には、ジャケットのポケットに差し込む板状のものと、肩ベルトや腰ベルトで体に着けるベスト型・単体型があります。
差し込み式は、ポケットの形と大きさが合わないと入らない、または中で動いてしまうので、ジャケットのメーカーが出している対応表で確かめてから買います。
ジャケットを季節で替える人は、どのジャケットの下にも着られる単体型にしておくと、1つで通年使えます。
次に胸、普段のズボンならひざ
背中の次は胸です。
胸用もジャケットのポケットに入れるものと、ベルトで留める単体のものがあり、背中用と一体になったベスト型を選べば、一度に両方を揃えられます。
通勤で普段のズボンやジーンズのまま乗っているなら、ひざのプロテクターを足すと、転んだときに最初に路面に当たりやすい場所を覆えます。
ズボンの上から巻くものは着け外しが簡単で、職場ではすぐ外せるのが利点です。
毎日乗るなら、ひざと腰にポケットのあるバイク用パンツに替えるほうが、ずれにくく着け忘れもありません。
背中と胸は「形」と「レベル」を見る
背中と胸のプロテクターには、ヨーロッパの規格の番号とあわせて、形の種類と「Level 1」「Level 2」の段階が書かれていることがあります。
規格番号の一覧の読み方は、ジャケットの選び方の記事にまとめています。
背中と胸を選ぶときに迷いやすいのは、どの形か、どのレベルかの2つです。
背中は、全体・中央・腰の3つの形がある
背中のプロテクターの規格(EN 1621-2)では、背中の広い範囲を覆う「全体型」、背骨に沿った中央を覆う「中央型」、腰まわりだけの「腰型」の3つの形を分けています。
同じ「背中用」でも、腰型は背中の上のほうを守りません。
背中全体を守りたいなら、タグや商品説明で形の種類を確かめます。
レベルは2段階あり、Level 2のほうが体に伝わる力の基準が厳しくなっています。
そのぶんLevel 2は、重く、厚くなることが多いです。
長く走るツーリングや速度の高い道が多いならLevel 2、短い通勤で着け外しが多いなら軽いLevel 1、と「毎回着けられる重さ」を優先して選ぶのが現実的です。
背中用のサイズは、腰から肩までの長さ(cm)の範囲で表示されることが多く、自分の寸法がその範囲に入るものを選びます。
測り方は製品の説明書に書かれているので、それに従って測ります。
胸は、左右分割型と一枚型がある
胸のプロテクター(EN 1621-3)には、左右2枚に分かれた「分割型」と、胸の前を1枚で覆う「一枚型」があります。
ジャケットの胸ポケットに入れる場合は、そのジャケットがどちらの形に対応しているかを、商品説明で確かめてから選びます。
胸のレベルは、Level 1は、体に伝わる力の試験に合格したもの。Level 2は、それに加えて衝撃を広く散らす試験にも合格した、より硬い作りのものです。
オフロード用には、飛んでくる石を防ぐことだけを目的にした胸当てもあり、こちらは衝撃をやわらげる胸のプロテクターとは別の規格です。
公道で転んだときの備えとして選ぶなら、胸のプロテクターの規格の表示があるものを選びます。

タグのそのほかの表示
背中用の規格では、常温での衝撃の試験がすべての製品で必須です。
一方、暑いとき(+40℃)と寒いとき(-10℃)の試験は追加の項目で、合格したものだけに表示があります。
真冬の早朝に走ることが多い人は、低温の試験の表示があるものを選ぶと、冷えて硬くなったときの性能も確かめられたものになります。
着ける位置とサイズは、乗った姿勢で合わせる
プロテクターは、前かがみでハンドルを握った姿勢のときに、守りたい場所の上に乗っているかで合わせます。
差し込む前に、プロテクターの上下と、体に当たる面を説明書や本体の表示で確かめます。
冬に使うならインナーを着込んだ状態でジャケットを着て、前を閉めます。
腕を前に出して背中を丸め、バイクにまたがったときと同じ前かがみになります。
肩とひじは関節の先、背中は背骨の上、ひざはひざの皿の上に乗っているかを、鏡か家族の目で確かめます。
腕や腰の調整ベルトを締め、腕を回してもプロテクターが動かないところまで詰めます。
ベルトを締めきってもずれるなら、ジャケットかプロテクターのどちらかが大きすぎます。
ひざのプロテクターは、またがってひざを曲げた姿勢でひざの皿の上に来るかを見ないと、立った姿勢では合っていても乗るとずれていることがあります。

プロテクターでよくある疑問
- 夏は暑くて、背中や胸のプロテクターを着けたくありません。
-
通気の穴が開いたものや、薄く軽いLevel 1のものなら、メッシュジャケットの下でも熱がこもりにくくなります。
重くて着けなくなるLevel 2より、毎回着けられる軽いものを選ぶほうが、結果として守られる日が増えます。
- 一度転んだプロテクターは、まだ使えますか?
-
強い衝撃を受けたものは、見た目に変化がなくても中の素材が傷んでいることがあります。
交換の目安は製品ごとに説明書に書かれているので、強くぶつけたあとは説明書の目安に従って交換を考えます。
- エアバッグのベストは、普通のプロテクターと何が違いますか?
-
エアバッグは、転んだときなどにふくらんで体を覆うもので、ふくらむ前提の別の規格(EN 1621-4)があります。
ふくらむきっかけ(車体とつなぐひもか、センサーか)、使ったあとの部品の交換、充電の要否が製品で大きく違うので、説明書でしくみと手入れを確かめてから選びます。
- 中古やフリマのプロテクターでも大丈夫ですか?
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前の持ち主が転んだことがあるか、どれくらい使ったかが分からないので、背中や胸のように大事な場所のものは新品を選ぶほうが安心です。
- プロテクターは洗えますか?
-
ジャケットを洗うときはプロテクターを外してから洗い、プロテクター自体の手入れは説明書の表示に従います。
乾いてから、元の向きと裏表でポケットに戻すのを忘れないようにします。
プロテクターを足すと気持ちに余裕が出ますが、守りを足したぶんだけ速度を上げてしまえば、足した意味は小さくなります。
着けたうえで、これまでどおりの車間と速度で走ることが、プロテクターを生かすいちばんの使い方です。
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