走り出すと後ろのほうから「シャー」「ジャリジャリ」と乾いた音がして、停めて見るとチェーンが黒く汚れていた。
この音は、チェーンの油切れ、汚れのたまり、たるみの広がりのどれかが原因になっていることが多いです。
油切れと汚れなら、掃除と注油で手当てでき、ここは自分でやってよい手入れです。
一方で、たるみの調整と、チェーンやスプロケット(歯車)の交換は店に任せる作業です。
なお、後輪をシャフトやベルトで回す車体や、多くのスクーターのように駆動部がケースの中にある車体には、ここで扱う手入れは当てはまりません。
その場合は、取扱説明書の点検の項目に従います。

チェーンの手入れは、どこまで自分でできるか
チェーンまわりは、「拭く・洗う・差す・測る」までが自分、「ゆるめる・締める・外す」からは店と分けると迷いません。
| 作業 | 自分でやってよい条件 | 店に任せる場合 |
|---|---|---|
| 掃除・注油 | エンジンを止め、後輪を手で回すか車体を押して動かせる | 汚れが固まって落ちない、さびが広がっている |
| たるみを測る | 平らな場所で、定規を当てて測れる | 場所によってたるみが違う、基準の範囲を外れている |
| たるみの調整 | 自分ではやらない | 範囲を外れたら店で調整(車軸のナットをゆるめて締め直す作業のため) |
| チェーン・スプロケットの交換 | 自分ではやらない | すべて店 |
たるみの調整は、後輪の車軸のナットをゆるめて後輪の位置を動かし、まっすぐに合わせて締め直す作業です。
締め付けが足りなかったり、後輪が斜めについたりすると走りに直接響くため、取扱説明書で「調整は販売店で」と案内している車種もあります。
次のどれかに当てはまったら、自分で締め直そうとせず、走るのをやめて販売店やバイク店で点検を受けます。
- 掃除と注油をしても音が消えない、だんだん大きくなる
- チェーンが引っかかるように動く、曲がりにくいコマがある
- たるみが取扱説明書の範囲を外れている、「これを超えたら乗らない」と書かれた値を超えている
- スプロケットの歯がとがったり、欠けたりしている
最初に、シールチェーンかどうかを見る
チェーンには、コマのすき間にゴムのリング(シール)が入った「シールチェーン」と、入っていない「ノンシールチェーン」があります。
シールチェーンは、中のグリスをゴムのリングで閉じ込めて、長持ちさせる作りです。
そのぶん、ゴムのリングは溶剤や強い水流で傷みやすいという弱点があります。
ノンシールチェーンは中に油を閉じ込める仕組みがないので、外から差す油が切れると傷みが早く進みます。
見分けるには、チェーンを横からのぞき、プレートとプレートの間に黒いゴムの輪が並んでいるかを見ます。
取扱説明書のチェーンの項目に、シール付きであることや、使ってはいけない洗浄剤が書かれていることもあります。
どちらか分からないときは、「シールチェーン対応」と書かれた洗浄剤と油を選んでおけば基本的に困りません。

洗浄剤とチェーンオイルの選び方
洗浄剤は「シールチェーン対応」の表示で選ぶ
チェーンクリーナーは、缶や商品ページに「シールチェーン対応」「Oリング・Xリング対応」と書かれたものを選びます。
汚れが軽いうちは、中性洗剤で洗う方法を取扱説明書で挙げている車種もあります。
ガソリンやベンジンのような揮発性の溶剤、研磨剤入りのクリーナー、シールチェーン向けでないクリーナーは、ゴムのリングを傷めるので使いません。
同じ理由で、スチーム洗浄、高圧洗浄機、金属のワイヤーブラシも避けます。
チェーンオイルは、乗る場面で粘りを選ぶ
チェーンオイル(チェーンルブ)も、まずシールチェーン対応の表示を確かめます。
取扱説明書に指定の油が書かれていれば、その指定どおりのものを使います。
そのうえで、雨の日に乗るか、汚れをどこまで気にするかで粘りを決めます。
| 乗り方 | 向くタイプ | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 雨の日も通勤や配達で乗る | 粘りが強く、流れ落ちにくいタイプ | 砂ぼこりが付きやすいので、掃除の回数を増やす |
| 晴れの日のツーリングが中心で、汚れを抑えたい | さらっとして、べたつきの少ないタイプ | 持ちが短めのものが多いので、差す間隔を詰める |
| どちらとも言えない | 中くらいの粘りの汎用タイプ | 汚れ方と乾き方を見て、次に買うときに選び直す |
スプレーなら、細いノズルの付いたものを選ぶと、コマのすき間に狙って差せて、まわりに飛びにくくなります。
一緒にそろえる道具
- やわらかいブラシ(チェーンの3つの面を一度に洗える形だと早い)
- ウエス(使い捨ての布)を数枚と、作業用の手袋
- チェーンの下に敷く段ボールと、タイヤ・ブレーキをおおう紙や布
- センタースタンドのない車体で後輪を浮かせたいなら、車体に合う形のメンテナンススタンド
スタンドがなくても、車体を少しずつ押して動かせば、見えている部分から順に手入れできます。
掃除から拭き取りまでの手順
作業は、平らな場所でエンジンを止め、ギヤをニュートラルにしてから始めます。
エンジンをかけたまま後輪を回して作業すると、指や布がチェーンとスプロケットの間に巻き込まれるおそれがあります。
チェーンの下に段ボールを敷き、後輪のタイヤとブレーキのディスクに薬剤がかからないよう、紙や布でおおいます。
洗浄剤を吹き付け、やわらかいブラシで黒い汚れをかき出してから、ウエスで拭き取ります。
中性洗剤で洗ったときは、弱い水流で流してから次に進みます。
水気や洗浄剤が残ったままだと油がなじみにくいので、ウエスで拭いてから乾くまで待ちます。
ローラーとプレートのすき間を狙って、一周ぶん少量ずつ差していきます。
少しなじませてから、表面に残った余分な油をウエスで拭き取ります。
多すぎる油は、走ったときに服や車体へ飛び散ります。

タイヤとブレーキに油を付けない
タイヤやブレーキに油が付くと、滑ったり、ブレーキの効きが落ちたりするおそれがあります。
ブレーキのディスクやパッドに油がかかったときは、拭いて済ませずに、乗る前に店で見てもらいます。
注油の頻度は、距離と天気で決める
間隔は、まず取扱説明書の点検表に書かれた「◯kmごと」を確かめます。
その値を基本にして、表面が乾いて見えたら、距離が来る前でも早めに足します。
悪い道をよく走る、高速道路をよく使う、急な加速をくり返すといった乗り方なら、点検の間隔を短くします。
| いまの状態 | どうするか |
|---|---|
| 取扱説明書の距離が来た | 注油する(汚れていれば掃除から) |
| 表面が乾いて、つやがない | 距離の前でも注油する |
| 雨の中を走った | 水気を拭き、乾いてから注油する |
| 洗車した | 乾かしてから注油する |
| 黒い汚れが厚くたまった | 掃除してから注油する |
| 赤さびが広がっている | 注油で済ませず、店で点検 |
回数で迷ったら、この2本立てで決める
注油は、「取扱説明書の距離」か「雨・洗車のあと」の早いほう。
掃除は毎回でなくてよく、黒い汚れが厚くなったときに注油の前に足す。
差した日と走行距離を書き留めておくと、次の時期の見当がつきます。
洗車で水をかけてよい場所と避ける場所は、洗車の手順の記事で取り上げています。
たるみの測り方と、店に任せる目安
基準の値は、取扱説明書か車体の表示で確かめる
たるみの基準は車種ごとに違い、取扱説明書や、車体に貼られた表示の値に合わせます。
値は「◯〜◯mm」のように幅で書かれ、「これを超えたら乗らない」という上限が別に書かれていることもあります。
- 平らな場所でエンジンを止め、ギヤをニュートラルにする(サイドスタンドで立てるか、後輪を浮かせるかは取扱説明書の指示に合わせる)
- 前後のスプロケットの中間あたりで、チェーンを指で上下に動かす(下側で測るか上側で測るかも取扱説明書に従う)
- いちばん上といちばん下の差を、定規で測る
- 車体を押して少しずつ動かし、何か所かで同じように測る

範囲を外れたら、調整は店に頼む
たるみは少なすぎるとチェーンが早く伸び、大きすぎると歯車にうまくかみ合わなくなります。
「張り気味なら安心」とは言えないので、範囲を外れていたら、自分で締め込まずに店で調整してもらいます。
測る場所によってたるみが違うときは、動きの固いコマがあるおそれがあり、調整だけでは直りません。
交換の判断も店で、チェーンと歯車をまとめて見てもらう
交換を考えるのは、コマの動きが固い、傷や変形がある、スプロケットの歯がすり減ったり欠けたりしているときです。
すり減ったスプロケットに新しいチェーンを組むと、チェーンが早く傷みます。
そのため、チェーンだけで決めず、前後のスプロケットの状態と合わせて店に見てもらうと、交換の範囲を判断しやすくなります。
後輪のまわりを見るついでに、タイヤの溝やひびも確かめておくと手間が一度で済み、見方は空気圧と点検の記事で取り上げています。
次に走り出して後ろから「シャー」と乾いた音がしたら、停めてチェーンの表面につやが残っているか、黒い汚れが厚くなっていないかを見ます。
掃除と注油のあとで音が静かになったなら、差した日と距離を書き留めて、次は少し早めに差します。
手入れをしても音が残る日は、そのまま走らずに店へ相談します。
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